日本聖公会 神戸教区ホームページです。このホームページにはキリスト教信仰に関わる情報が集約されています。

主教からのメッセージ

アンデレ便り8月号:からだの健康診断 その1

2010年8月1日

 「中村さん、去年の検査のとき、血圧が高くなっているから、お医者さんと相談しなさいと、私が言ったのを忘れたのですか」。成人病検査の折、血圧を計測した看護師さんは、運悪く、私のことをよく覚えていたのです。怠慢を指摘された私の交感神経は素早く反応を示し、再度の計測では、血圧は下がるどころか前以上に上昇し、結局、胃透視検査は不可能となりました。その後、高血圧に関する書物を2,3冊読み、薬を飲まずに血圧を下げる方法を研究したものの、その実践には至らず、血圧にさして改善は見られませんでした。

恐怖の検査

  昨年度の教区会で、厚生部長は私の方をちらっと見ながら、「教区主教はじめ教役者数名が成人病検査を受けておりません。来年こそは全員受けるようにお願いします。」と訴えられました。2年間、検査を怠っていた私に最後通牒を言い渡されたのです。検査の日がやってきましたが、3年前の出来事が私のトラウマとなり、病院に足を踏み入れると自然に心臓の鼓動が高鳴るのでした。予備検査員が血圧を計ったところ、予想したとおり、相当高い数値が出ました。降圧剤を飲んで、待合室でしばらく様子を見ることになりました。一所懸命心を落ち着かせ、平常心に戻るように努めましたが、担当医からは、この血圧では胃透視検査は無理との判断が下されました。「心頭滅却すれば火もまた涼し」の境地にとても達することができない自分は、いかに俗人であるかを思い知らされたのでした。 1週間後、意を決して、兵庫県庁前にある診療所に足を運びました。お医者さんは、ミカエル教会に関係した司祭数名の名を挙げ、懐かしそうに私に語りかけてきました。定年まであと6年、健康問題で教区の皆様に迷惑をおかけするわけにはいきません。
とうとう私も、降圧剤なしでは生活できない人たちの仲間に加わりました。

見えないところで傷ついていた大聖堂

 人間のからだの場合、血液や尿検査、レントゲン、胃や腸にカメラを入れることによって初めて、隠されていた問題点が明らかになるのと同様、今まで目視だけでは分からなかった大聖堂の弱点が白日にさらされました。
 敷き詰めていたカーペットを取り払いますと、聖堂床面積の約五分の二に亀裂が入っていることが判明しました。足場を組み、屋根の鉄板を触診し、外壁を丁寧に叩いていきますと、鉄板やタイルが相当痛んでいることがわかりました。当初予定の屋根用ペンキの寿命は6,7年でした。10年後には、再度足場を組んで塗り直さなければなりませんから、12,3年間、防錆を保証するペンキに変更しました。聖堂南側と北側ライトの照度が充分でないことが判明し、新たな電気器具設置が求められます。追加工事費が膨らんでおりますが、やむを得ません。人間のからだと同様、大聖堂も、今回の工事を機会に充分な手当をしておかないと、取り返しの付かない健康状態になることが予測されるからです。

ワールドカップとブブゼラ

 苔の生えたような話になりますが、英国ケラム神学校在学中の2年間、冬は毎週金曜日の午後、サッカーの試合が組まれました。神学校では、午後9時のコンプリン(終祷)から朝食まで沈黙を守りますが、水曜日と土曜日にはイギリス各地で試合が行われます。その結果を知るために、こっそりとテレビを持ち込んでいた他の学生の個室で、数名の神学生と共にBBCの「Mach of the day」を観るのが楽しみでした。当時、マンチェスター・ユナイテッドのジョージ・ベストやボビー・チャールトンは超スーパースターで、北アイルランドでは、当地出身の、「ナルニヤ物語」で有名なCS・ルイスと並んで、ジョージ・ベストは今日でも英雄で、ベルファースト国際空港は「ジョージ・ベスト空港」と名付けたほどなのです。

夢を運んだ一発

 4年に1回開催されるワールドカップを楽しみにしておりました。しかし、日本代表の前評判は芳しくありません。
サッカーファンの、ある司祭にワールドカップの日本代表がどこまで勝ち進むかの予測を聞きますと、「日本は予選で1勝もできなないでしょう。悪くすれば3敗」、という返答でした。巷の予想も最悪です。スポーツ誌「ナンバー」で奥田秀朗氏は、「(岡田監督の)目標は『ベスト4』ですって。年末には流行語大賞にみなさんで推挙しようではありませんか。・・・・・・だいたいフランス大会で3連敗した監督を、世界で経験を積み直したのならともかく、そういうこともなく再登板させる国なのである。ギネスもの。『世界を驚かす準備は出来ている』ってもしかしてそういうことか?」と酷評しているのです。

 私の予想では、カメルーンには勝つ可能性が大とみました。カメルーンの選手は全員出稼ぎで、ワールドカップ開幕まで、チームがまとまる時間が充分でない、というのがその理由です。オランダにはとても歯が立たちそうにありません。スエーデンは引き分け。一勝一敗一分で予選突破というのが私の予想でした。これには条件があります。オシム前監督時代、選手にすっぱくいっていたこと、つまり、90分間、走って走って走るまくり、しつこくボールに食らいつくという作戦を岡田監督も踏襲すれば、絶対に勝運が開けるとふみました。
かくして、カメルーン戦での、本田選手の華麗なゴールが引き金となり、多くのファンの予想を裏切り、2勝1敗で日本は予選を突破したのです。
 教会も例外ではないと思いますが、日本の経済や政治が意気消沈し、暗い話ばかりが話題となっている昨今、日本チームの戦いぶりは、「自分たちはそれほど悪くはないぞ、やればできるのだ。」という励ましと勇気を私たちに与えてくれたのでした。

ブブゼラはうるさい?

  今回のサッカーワールドカップで、応援のために使用が許可されたのがブブゼラという南アフリカの民族楽器です。テレビ観戦した多くの人たちは、試合の最初から最後まで鳴らされる音に不快感を持ったようです。ある試合では、ある選手がこの音に怒って、レフェリーに、ブブゼラを吹くのを止めるように訴えておりました。他の選手に、大声でポジションの指示を出しても、自分の声がブブセラ音にかき消されてしまったからです。私も、最初は、この音がうるさくて気が散ってしまい、選手のプレーをじっくりと見ることができませんでした。ところが、2試合、3試合と回を重ねる事に、ブブゼラの音はここちよい響きに変わったのです。
ブブゼラと蛙の鳴き声には少々の違いはありますが、「音」に関して、次のような話をおもいだしました。

蛙の祈り

 ある夜、兄弟ブルーノが祈っていると、食用ガエルの鳴き声がうるさくてかないません。無視しようとすればするほど、気が散ってきます。そこで、窓から顔を出して、カエルに向かって「静かにしろ、祈っているんだから」と怒鳴りました。ブルーノは聖者のほまれが高かったので、彼の一喝により、あたりはしんと静まりかえりました。
 祈っているブルーノのなかに別の響きがわき起こりました。「もしかして神は自分の唱える祈りと同じくらい、カエルの鳴き声を喜んでおられるのではないか」。「カエルの鳴き声がなんで神を喜ばせるのだ」と、ブルーノは心の中で冷ややかに答えました。ブルーノのなかにさらに響き続ける声が言います。「神はなぜ、音なるものをつくり出したと思うのか。」
そこでその答えを見つけるためにカエルに向かって「さあ、歌うんだ」といいますと、食用ガエルの、調子のそろった鳴き声は、近隣のカエルというカエルの声を呼び集め、天空を振るわせました。ブルーノがこの音を、全身を耳にして聴いていますと、鳴き声は神経に障る物音ではなくなってきました。鳴き声に抗うことをやめますと、この鳴き声こそが、夜の沈黙をいっそう豊かにしていると気づいたのでした。

(アントニー・デ・メロ著「蛙の祈り」より)